「六角葉月vsミミ吉原〜真夏の夜の道場〜」


理沙子は暑さで目が覚め、少し夜風に当たろうと外に出てみると
真夏の暑い深夜の道場に灯りがついている

道場の灯りに気がつき覗き込んだ。
するとそこには二つの影が上になったり下になったりとグラウンドの勝負をしているようだ
見たことのないコスチュームなのだが、よく見るとよく知る顔の二人が汗を流し、くんずほぐれつのグラウンド合戦
こんな遅くになぜ?こんな場所で?一体何ごとだと窓越しから様子を伺うことにする

「ギ・・・ギブ・・・・・」

決着がつき、首に巻かれた腕をほどくと

「・・・はぁ・・・何度やっても結果は同じなんだし、ゆっくり酒でも飲まないかい?」

女はもう一人の女に尋ねる

「・・・はぁ・・・はぁ・・・まだよ、3本のうち1本決まっただけです・・・」

「・・・泉・・・じゃ、次で終わりにして酒にしよう」

「・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・葉月さん次こそ勝ってみせます」

「“さん”はいらないっていったろ!・・・でもこんな感じで昔よく理沙子が勝負挑んできたな・・・」

この二人がなぜ?理沙子は色々と考えるがこれといったことが思いつかない
葉月と泉は暑い道場のムッとした空気を入れ替えようと窓をあけようとすると窓の外にいる理沙子の存在に気付き
理沙子は二人に呼ばれ暑い道場の中へと誘い込まれた

理沙子はこの際だと二人に経緯を聞いてみると
六角葉月は話し出した。

そもそも六角は理沙子に海外から呼び寄せられ新女というリングに選手兼コーチという立場で復帰した。
復帰した六角は色々な若手の実力を知るために何試合かを組まれ凱旋試合を行った。
偶然、ミミ吉原は六角葉月とボンバー来島の試合を観戦したのだが
パワーファイトで有名なボンバー来島を子供扱いにし、来島お得意のパワーファイトを簡単に封じ込め
グラウンドに持ち込むと一瞬のうちにボンバー来島を締め落としたのだ。
それを見てミミ吉原は何か胸にグッとくるものがこみ上げると六角葉月に勝負を挑んだのだ。
が、六角は当初新人を鍛えるという目的があると何度も断っていたのだが
吉原と理沙子の関係を聞くうちに、それでは他の選手や観客に見せない。という条件で
吉原の挑戦を受けることにした。というのだ。

「休憩も済んだし・・・ちょうどいい、理沙子あんたレフリーしてくれないかい?」

「・・・わかったわ」

というと理沙子は快く承諾して無観客試合3本勝負の2本目のレフリーをする事となった。

二人の姿は真夏の暑い道場で闘っていた為にかなりの汗で
コスチュームにもべっちょりと染み渡っているといった感じで
ベテラン選手の体はベチョベチョとなり、道場の光に照らされテラテラと光っている。
コスチュームはいつもの試合用ではなく別のもので
二人しかいないし暑いので水着タイプのものを着用している。

「・・・それでは二人ともいいわね?ファイッッ!!」

汗ばんだ二人の熟女レスラーは手と手が触れるか触れないかの状態で
相手との間合いをとりあっていたのだが、先に六角は低空のタックルを相手に見舞う。
それを寸での処でかわすと吉原は後ろに回ろうとするのだが六角も簡単にバックをとらせようとしない
クルリと反転しつつ六角は左手を使い吉原の踵を取ろうとする。
軽めのジャンプでそれをかわそうとするのだが、一瞬足首を捕まれると
ものすごい力で引っ張られてしまう・・・
引っ張られる勢いで六角の首をキャッチしフロントスリーパーにもっていこうとするが
首を抜かれ、そのまま六角にガードポジションの形に持っていかれてしまった。

「・・・またさっきと同じ形・・・これで終わりに・・・っ!!」

「・・・まだこれからです」

吉原はガードポジションの状態の自分の両太股を六角の体に巻きつけると
ボディシザースを見事に六角に極めた。

「・・・さきほどと同じようにいきませんよ・・・」

「・・・・・少しは勉強したのかい・・・・ぐっ・・・うぅ・・・」

強烈な吉原のむっちりとした太股から繰り出されるボディシザースに
六角の鍛え上げられた腹は悲鳴をあげてしまいそうだった
新人レベルならもがきながらロープへと逃げだしてしまいそうなボディシザースは
確実に戦意を奪いつつあったのだが、そう簡単に行く相手ではない

「・・・ぐぐ・・・・これなら・・・どう!!」

お返しとばかりに六角は自分の腕を吉原のお腹に巻きつけ抱きつくように
逆にベアハグのように吉原のお腹を締め付け始めた

「・・・・・・あぁ・・・ぎぃ・・・・・・」

両太股に集中していた為にお腹周りの筋力が油断していたところに
力強いベアハグが襲い掛かる
抵抗する暇なく吉原は完全にロックされ身動きが取れない
だが、この太股の力を緩めるわけにもいかない
互いの意地がぶつかり合い体力を奪い合うと
ベテランレスラーは次の手に出る

先に動いたのは上になっている六角
力いっぱいの力で一瞬吉原の太股が緩んだ瞬間に
後ろに体重を乗せると反転しつつ両腕のロックを外し
スルリと抜け出し左足首を掴むとローリングしながら
アキレス腱固めへと移行し始める。
そうはさせじと吉原も回転しながら自分の体を六角の上に持っていくと
立ち上がりながら膝を立てアキレス腱が決まるのを防ぐ
極め損ねた六角はすぐに左足首を開放すると今度は下から
相手の腕を狙うような動きを見せると上にいた吉原は
力に持っていかれないように先に首を取りにいこうとする
六角はまたもや体を回転させると腕を見事に捕らえ
吉原の腹ばい状態にさせ横から腕をロックすることに成功する

「・・・まだこっちのほうが・・・っ!!」

耳元へ吉原に言おうとした瞬間に
でんぐり返しをした吉原は回転し脱出に成功する
逃げられた六角は吉原の攻撃をガードしようと亀状態になるが
一歩遅く腹ばいにさせられると腕を巻きつかせられ二人は腹ばい状態のまま
フロントフェイスロックに捕らえられた。
極められる直前、腕を掴みながら六角は体を腹ばいから見事体を回転させると
いとも簡単にフェイスロックから抜け出した。
腕をそのまま掴み、絞りながら立たせ後ろに回ってスリーパーを極めにいくと
吉原は自分の体を前方へ回転させ、ビクトル式膝十字固めを極める。
二人はゴロンと回転すると吉原は膝十字を完成させた。

「・・・う・・・・あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁっ」

六角は膝十字を極められ、呻くと

「・・・どうですギブアップしますか?」

吉原は六角に尋ねる。

「・・・・・・ぅ・・・ぅ゛・・・ぐぐっ・・・・・・まだ・・・だ・・・」

完璧に極まっておらずポイントが少しずれていたようで助かった六角は
捕まえられた左足に巻きついた吉原の両手に右足を入れるとロックが弱まり
ここぞとばかりに相手から足を救出させることが出来た。

そのまま六角は完全に抜け出すと防御体勢で亀状態になる吉原の背中を中心に
右や左と左と右へという感じで相手にどこを狙っているのかというのを
悟らせない動きをみせると
左手に左足を絡め強引に飛びつくと次にそのまま首を捕ると
未完成ながらクラップラーフェイスロックを極める。
力任せのフェイスロックは極まったように見えたが
完全に両腕のロックは解除されずに中途半端な形のフェイスロックでは
吉原をギブアップさせれないことを感じた六角は
左足を絡めたまま、自分の体をでんぐり返しさせ自分ともども吉原の体も
でんぐり返しさせる事に成功した。

「・・・・・・っ!!」

突然の動きで両手首へのロックが解除されると
逆クラップラーフェイスロックとも言うべき技が吉原を襲う

「・・・・・・う゛・・・うぅ・・・う゛ぅ・・・う゛・・・ぐ・・・んん゛・・・ぎぃ゛ぃ゛っ・・・・・・ぁぁぁああああ゛あ゛ーーーッ」

叫び声は道場中に響き渡った・・・

よく見ると吉原の状態は仰向け状態のままで下から六角の体が土台となり
吉原の体はボーアンドローの状態に近く、左腕は六角の左足にロックされ
顔は完全にフェイスロックを極められている。
右手は天を仰ぐことしかさせてもらえない・・・

理沙子は慌てて泉の状態をチェックをする。
掴んだ泉の右手にはまだ力が残っているのでどうしようかと悩むのだが
“このままの状態が続けば・・・”
色々な事を考えつつ泉を見ると、涙ながらなのだが決してギブアップしないという眼をしている
“ここで勝手に負けを宣告すれば・・・”
泉はどう思うだろう?私なら・・・色々と考えていると

「・・・なかなか・・・・ギブしないな・・・」

六角は技を外すとダランと力なく吉原の体はマットに横たわる

「これで終わり・・・?」

六角は吉原に声をかけると
振り絞るように両肘を立て両膝を立て少しづつ六角に向かい合うように立ち始めた

「・・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・まだ・・・」

「・・・そうこなくっちゃ・・・」

六角は言葉と同時に容赦なくダッシュすると
吉原の首めがけてジャンプするとそのまま後方へ倒れこむように
三角締めを見事に極めた。

「う゛・・・う゛・・・・う゛う゛う゛・・・・・」

完全に極まった三角締めは喉元をじっくりと締め上げ
吉原の声も出ないぐらいに完全に締めつけ始めた。
六角の太股は体力のなくなっていく吉原に遠慮することなく締め付けると
徐々に吉原の眼には正気がなくなっていくと同時に
吉原の眼の白い部分が面積を占めていく・・・

六角の右太腿に2回“パンッパンッ”とタップの印が吉原から送られた
その合図と共に六角は吉原の首を締め上げていた汗だくの太股をゆっくりと離した

「・・・勝者・・・葉月・・・」

理沙子は葉月の腕をとると高々と上げて勝者を労った。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・」

泉は息するのだけでも精一杯という感じで虚ろな眼をしながら敗北した。

「・・・よっし!!・・・いい汗かいた・・・理沙子も・・・3人で朝まで酒でも飲もう・・・理沙子も暑いから脱げよっ(笑)」

六角はこの暑い真夏の道場から一歩でも早く出たいようで
急いで二人を引き連れるとリングコスチュームのままで道場の上にある屋上へと酒瓶を担いでいった。

二人の汗はライトに照らされテラテラと光輝いていた。

道場はその後再び寝静まった。




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